STORY2 迷走 

 

独立した当初は、不安だらけでした。
けれど、多くのお客様に応援していただき、なんとか店を続けることができた。
最初は、それだけで十分だったはずでした。

でも、少しうまくいき始めた頃、私はすぐに調子に乗りました。
「自分はすごい」「自分はできる」──そう思い込み、酒を飲み、騒ぎ、金を使い、自分の力だと信じ込んでいました。

金が尽きれば稼げばいい。
そんな考え方で生きていき、気づけばお金もどんどんなくなっていきました。

次第にさまざまな仕事に手を出し、「稼げるかどうか」だけで判断し、依頼されれば何でもやる。
とにかく金さえ稼げば正解だと、そう思っていました。

仲間と笑い、酒を飲み、SNSに楽しげな日々を投稿しながら、
気がつけば、本当にやりたかったことを見失っていたのです。

 


 

やがてコロナが訪れ、会社の売上は落ち、すべてが止まりました。
でも私はその原因を環境のせいにし、また“金を探す毎日”を繰り返しました。

寂しさや虚しさを、どうにか埋めたくて。
暴飲暴食に走り、酒に溺れ、遊びに逃げ、刺激だけの毎日で、心をごまかしていました。

楽しそうにしていた。でも、内側はずっと空っぽでした。
戦っているつもりでした。けれど実際は、ただ自分を守っていただけだった。

嫌いな相手にも頭を下げ、馬鹿にされても、金のために仕事をとった。
誇りなんて、もうどこにもなかった。

少し金を持てば見栄を張り、夢を語るだけで、何も行動しない。
そんな自分を、誰よりも自分が「ダサい」と思っていました。

それでも、“まだ大丈夫”と虚勢を張るしかなかった。

「何者でもないけど、なんとか生きている会社」
「なんでもしてくれるし、なんとかする人」

そう思われることが、どこか誇らしくすらありました。
ただそれ以上に、自分を犠牲にしていました。

 

 


 

そんな中、今までにない大きな仕事が舞い込んできました。
「これはすごい」「やっぱりやっていれば報われる」と思い込み、すべての業務を整理して、その案件に全力を注ぐ決断をしました。

「俺たちなら絶対にできる」「なんとかなる」「絶対にやる」──そう信じて、必死で取り組みました。

けれど──何もできなかった。

社員はどんどん疲弊し、一人、また一人と辞めていきました。
信頼していた仲間にも、「何のために働いているのかわからない」「狂っている」と言われました。
それでも、「金が入る。それがすべてだ」と、自分を信じるふりをしていました。

やがてその仕事も終わり、手元には、あれほどまでに求め続けた金だけが残りました。

 

 


 

自分が壊れていることに気づいたのはこの時でした。
なんの気力も湧かず、仕事をする気が起きない。
今日、自分が何をするのかも考えられない。
起きることすらできない。

“何がしたいか”“どう生きたいか”──それさえ、もう見えなくなっていました。

「なんのために働いたのか」「何が幸せなのか」
そうやって、どんどんわからなくなり、
自分はなんて無能なんだと、さらに自分を責めるようになりました。

そこからは、不安と絶望の中で、
「自分が生きている意味さえ、わからない」──
そんなところにまで、私は落ちていったのです。

何をしても、自分に自信が持てなかった。
そしてまた、お金を追うことを始めた。

けれど、何を始めても、心が満たされることはなかった。
そんな状態が、ただ繰り返されていきました。

そして、月日とともに、
お金も、自分の目的も──ただただ失っていきました。